【000】
ところで、なぜそこまでして出版しようとするのか。もちろん、それだけの価値があると思っているから。細部に不分明な表現箇所はあるけれど、若干の手直し
をすればよいものばかり。非常に独創的でありながら決して突飛ではなく、数理経済学の発展に大きく寄与するポテンシャルをもっていると思うから。
個人的に惜しむらくは、著者は「減耗する貨幣」についての概念は(さすがに)持ち合わせていないようで、もし可能なら、貨幣部門ではこれも取りこんだ数理
的体系化をおこなってもらいだいものだ。
あと、「経済活動」における「成長の限界」だけでなく「循環」についても言及しているのは喜ばしいが、解析が充分
ではないため、「持続可能な循環(表見上は螺旋上昇様)」についての数理的なアプローチを試みてほしいものだ。もし運よく連絡が取れたら、そこらあたりを
提案してみたい。
そうそう、できればこれも英訳版を出したいと思っている。ひろく知ってもらいたいと野心を燃やすのであれば、結果は別として、(世界中の多くの人びとが理解可能な〔翻訳レベルの〕)英語じゃないとだめだもんねえ。残念ながら(微笑) 著者は「減耗する貨幣」についての概念は(さすがに)持ち合わせていないようで、もし可能なら、貨幣部門ではこれも取りこんだ数理的体系化をおこなっても
らいだいものだ。
あと、「経済活動」における「成長の限界」だけでなく「循環」についても言及しているのは喜ばしいが、解析が充分ではないため、「持続可能な循環(表見上は螺旋上昇様)」についての数理的なアプローチを試みてほしいものだ。
【001】
「第3章 循環」>「第1節 エネルギー循環」>「図3.2 エネルギーフロー(複数モデル)」は、ホロニックな構造ではないだろうか。すくなくともそのように解釈して連携させることは無理筋ではないように見える。
【002】
「第3章 循環」>「第3節 物質と通貨」における利子の定義は非常に興味ぶかい。著者独自の見解だろうか。それとも借り物だろうか。要調査。
【003】
「第3章 循環」>「第3節 物質と通貨」後段および「第5章 通貨の機能」>「第1節 エネルギー媒体としての通貨」>「3.通貨の尺度機能」を(文面チェック=校正しながら読んでいて)著者の経済モデルの基礎をなす世界観と、この論考が稿了した1999年以降21世紀にはいって台頭した(前世紀終盤にBISにより仕込まれた会計ビングバンとこれに続く金融ビッグバンを端緒とする)金融グローバリズムとこれと連携した多国籍企業群の世界実体市場の席巻という、おぞましい強欲資本主義への眼尖は片鱗もないことに気づかされた。
なお、著者の世界観とは、モノとサービスの企業間競争における成長と循環のダイナミズム(だけを注視した、いわば健全な(?)資本主義)の世界である。自己資本比率8%がどうのこうのやビッグマネーをバックにした(敵対的)M&A等によるサバイバルゲールの世界は(著者自身の興味が薄いためか)対象とはなっていない。
しかしそれでもなお、いやそれだからこそこの書は、現代の“歪みきった”資本主義を映し出すじつによい鏡でもあるといえるし、そういう意味でも充分に“使える”本であることはまちがいない。ということで、最終的には英訳も試みたい。
【004】
「第5章第2節 通貨の利点と問題点」では後半の提言箇所で、著者の「(
通貨の融資制度の)あるべき姿への思い」が抑制基調ながらも率直に表出していて、この書のテーマの一つをなしているのがうかがわれる。ただし、“減耗する貨幣”(
自由貨幣)についての言及はないため、おそらくその発想自体もないようだ。
<2019-03-27 記>